仕事ができる人ほど、AI readyを急いだほうがいい
10日かかっていた仕事が1日で終わって、分かったこと
自分の仕事に自信があって、まだAIをきちんと使っていない方へ。急いだほうがいいです。
住所データを整え、本当にある住所かを確かめる。私が長く仕事にしてきた作業です。先日、その確かめ方を見直す仕事をAIと組んでやってみました。以前のやり方なら10日は見込んだ仕事が、1日で終わりました。
正直に言うと、まだ少し興奮しています。そして、こう思いました。これで一番得をするのは、AIに詳しい人ではない。自分の仕事の「正しさ」を知っている人だ、と。
01 THE ANSWER CAME FIRST調べる前に、答えが返ってきた
住所を確かめるとき、私はデジタル庁が公開している住所の基本データ、アドレス・ベース・レジストリ(ABR)を照らし合わせる先に使っています。とても役に立つデータですが、作業を進めると、番地の先の「号」が載っていない区画があることが分かりました。
こういうとき、私はまず「別の公開データを足せば埋まるのではないか」「ネットで調べれば分かるのではないか」と考えます。長年の習慣です。
ところが、そう投げかけた瞬間に返ってきたのは、「その道では埋まりません」という答えでした。どちらも元をたどれば同じ系統の地図から来ているので、同じところが抜けている。理由も添えて、すぐに返ってきました。
調べる前に、無駄な道だと分かる。いちばん驚いたのは、ここでした。
02 IF I HAD ASKED SOMEONE部下に1日やらせていたら
以前の私なら、部下に「このデータで埋まるか、1日かけて確かめてみて」と頼んでいたと思います。1日待って、上がってきたものを見て判断する。結論は同じ「埋まらない」だったでしょう。
その1日、私の考えは止まっています。戻ってきたときには、何を考えていたのかを思い出すところから始めます。しかも、部下が1日かけて上げてきたものを、見た瞬間に脇へ置くのは気が引けるものです。気が引けるから、少しは使い道を探してしまい、寄り道が増えます。
AIが相手なら、思いついたら投げ、違えばすぐ捨てて次に進めます。考えが途切れません。途切れないので、「あの件は誰に頼んだか」「あの確認はどこまで進んだか」という枝葉の管理もいりません。10日が1日になった理由は、作業の速さよりも、待つ時間と思い出す時間と枝葉の管理が、まるごと消えたことにあります。
03 ONLY IF YOU CAN JUDGE速くなるのは、判断できる人だけ
ここが、この話の肝です。
AIの答えは速く、次々に来ます。けれども全部が正しいわけではありません。採るか捨てるかを決めるのは人です。間に部下も会議も挟まらないので、判断の良し悪しがそのまま仕上がりに出ます。
一つ例を挙げます。住所の確からしさに点数を付けたとき、機械の出した点数が、理屈の上では正しいのに、現場の感覚とは順番が逆になっていました。区の名前が抜けているだけで、誰が見ても場所が分かる住所よりも、町名がまるごと抜けて場所が決められない住所のほうが、高い点になっていたのです。
文字の似ている度合いで計算すれば、そうなります。数字としては筋が通っています。けれども、これでは確認する人が納得できず、使われません。この逆転に一目で気づけたのは、長く住所データを見てきたからです。気づけなければ、AIはそのまま突き進みます。
AIは、判断できる人を何倍にも速くします。判断できない人を速くはしてくれません。
04 HOURS OR STANDARDS工数で頼むか、基準で頼むか
AIと組んで一番変わったのは、頼み方です。
| 工数で頼む(これまで) | 基準で頼む(これから) | |
|---|---|---|
| 頼み方 | 「このデータで埋まるか、1日かけて調べて」 | 「この区画の号が埋まれば使う。埋まらなければ『要確認』に回す」 |
| 待ち時間 | 1日 | 数分 |
| 返ってきたもの | 1日分の成果なので、捨てにくい | 基準に合わなければ、その場で捨てられる |
| 頼む人に要るもの | 誰に何日頼むかの段取り | 何が分かれば次へ進めるかを、言葉にする力 |
工数で頼むとき、頼む人は「どれだけ時間をかけるか」を決めています。基準で頼むとき、頼む人は「何をもって合格とするか」を決めています。AIに対しては、後者でないと速くなりません。
これは、人に頼むときも同じです。基準を言葉にできる人は、AIにも、部下にも、外の会社にも、速く正しく頼めます。
05 AI READY MEANSAI readyとは、判断を言葉にすること
「AI ready」は、AIを使える状態にデータを整えておくこと、という意味で使われることが多い言葉です。
私の実感は違います。今回の元のデータには、書き方の乱れも欄のずれもたくさんありました。それでも速かった。速かったのは、データがきれいだったからではなく、「何を正しいとするか」「迷ったらどうするか」を、その場で言葉にできたからです。
仕事のできる人の頭の中には、その基準がもうあります。ただ、言葉になっていないことが多い。「見れば分かる」「なんとなくおかしい」で済んできたからです。AI readyとは、その「見れば分かる」を、AIに渡せる言葉にしておくことだと、私は考えています。
06 WHY HURRYなぜ急いだほうがいいのか
AIは、これからもっと使いやすくなります。そう遠くないうちに、誰でもAIに頼めば、ひととおりのデータ整備ができる時代が来ると思います。
そうなったとき、差がつくのは「何を正しいとするか」を持っている人です。そして今は、その基準を持っている人がAIと組むと、持っていない人との差が一番大きく開く時期です。誰でもできるようになる前の、このはざまの時間は長くありません。
もう一つ、身軽さも効きます。細かな社内ルールで動く組織にいたら、AIの答えを使うたびにルールに書き起こし、承認を待つことになり、判断はそこで止まっていたと思います。まず自分の手元で試し、自分で判断してみる。それができる人から先に進みます。
07 START TOMORROW明日からできること
難しいことは要りません。
- 「見れば分かる」を三行にする自分がいつも「見れば分かる」と言っている判断を一つ選び、それを三行の言葉にしてみます。
- その三行をAIに渡してみる公開されているデータや、自分で作った試しのデータで、同じ判断ができるか確かめます。お客さまの個人情報は入れません。
- 「違う」と思ったら、理由を返すなぜ違うのかを言葉にして返します。その往復が、そのままAI readyの練習になります。
自分の仕事を知っている人ほど、この往復は速く回ります。だから、急いだほうがいいのです。
関連:ホワイトペーパー『データ作業、AIに任せられること・任せられないこと』(人とAIの役割分担)/同じお客さまを、同じ人として数える(データを「決める人」と「そろえる人」)/その住所、「一之江」と「一之江町」を取り違えていませんか
気になっていることを、一行で。
「うちの住所データで、何を正しいとすればよいか」「どこから人が見るべきか」など、一行だけでも構いません。データを送っていただく必要はありません。内容を伺い、確かめ方からお答えします。
合同会社オンエーケー(OnAK)は、データクレンジング・名寄せ・データ突合を専門とする会社です。